日本共産党大田区議団の村石まい子区議が討論を行いました。以下全文です。
党区議団を代表して、7第24,32、35、43、44、45、46,47号の陳情を不採択とした委員長報告に反対し、採択を求める討論を行います。
7第24号
政務活動費に関する所得税法違反の懸念と議会の対応を求める陳情は、政務活動費の使用に関し、所得税法に違反する恐れのある支出が確認されたとし、大田区議会で当該事案を明らかにし、今後同様の問題が生じないよう適切な対応を講じることを求めています。
所得税法 第6条は「…給与等の支払をする者その他源泉徴収に規定する支払をする者は、この法律により、その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある」と定めています。
私たち日本共産党区議団は会派として事務局員を雇用していますが、所得税を源泉徴収していることはもとより、社会保険と労働保険にも加入しています。陳情者が情報開示請求によって確認したとする、「自由民主党大田区民連合」の人件費項目の支出で指摘している内容は所得税法違反に該当する可能性があります。
しかし、所管・議会運営委員会では、指摘されている自民党会派から、雇用主である会派と労働者の契約内容や労働者の雇用形態など詳細は示さないどころか、「そもそも答える必要もなく、会派で対応する」と不採択にしてしまいました。その実態は結局分からないままです。今回の陳情は、6月の第二回定例議会に出され、人件費支出の問題として提起された問題です。6月の委員会で自民党会派は陳情に対する態度表明で、「現時点において妥当な判断を行うためには、必要な情報が不足しており、今後、適切な対応を図るべく、協議を実施していくことになると考えます」とし、継続審議を主張しましたが、結局、現在の自民党会派はこの区民から指摘された問題・疑惑に答えられない状態になっています。
大田区議会として、区民から出されている重大な疑惑に応える必要があります。陳情の趣旨を重く受け止め、本事案にかかわる問題の実情や、全会派の実態を明らかにするためにも、本陳情の採択を求めます。
国民健康保険の区民に対する資格確認書の一斉交付に関する陳情は、様々な診療時の混乱や区の負担増を解決するために、全ての国民健康保険加入者に「資格確認書」を一斉交付することを求めるものです。
委員会では、「一斉交付による二重交付で不正が起きるのではないか」「区は要配慮者や、紛失した場合に資格確認書を送付するなど寄り添った対応している」「不安な気持ちはわかるが」「マイナ保険証は不正防止になっている」などの理由で不採択となりました。
しかし、今年の7月末に後期高齢者医療保険証の有効期限が一斉に切れ、資格確認書を求める人が自治体の窓口に殺到するのを防ぐため、厚労省は4月、75歳以上の人に対し、マイナ保険証の有無に関わらず「資格確認書」を自動交付するよう都道府県に通知し、後期高齢者医療広域連合は加入者に「資格確認書」を一斉交付しました。そして、渋谷区、世田谷区では、9月末に国民健康保険証が有効期限を迎えるのを前に、国民健康保険の加入者全員に「資格確認書」を一斉交付しました。
また、陳情者は、マイナ保険証の登録者は約7割なのに、利用率が3割と低調なのは、マイナンバーカードの紛失リスクなどから、マイナ保険証の利用を控える加入者が一定いることが明らかになっていて、このままでは、マイナ保険証の登録解除申請をして資格確認書の発行を行う区民が増え、窓口での業務負担がさらに増大することも懸念しています。
国の拙速(せっそく)な政策に、区民も大田区も医療現場も大きな負担を被っていると言わざるを得ません。国民健康保険加入の区民に「資格確認書」を一斉交付することによって、現在被っている負担増の軽減になり、そして何より加入者が医療に確実につながるように、本陳情の採択を求めます。
7第44号
参議院選挙での公職選挙法に抵触する行為の解明と区民への周知を求める陳情は、大田区民の中に、今回の区の対応に不信感が広がっており、今後の投票行動にも影響を与えかねない重大事態だと考え、誠実で迅速な解明をし、その結果を区民に知らせることを求める陳情です。
委員会では「すでに区は必要な措置をとっている。」「願意は満たされている」「被疑者が立件され全容が明らかになるまで公表はできない」「第3者委員会が立ち上がりその後速やかに公表される」といった意見で不採択となりました。
しかし、7月20日執行の参議院議員選挙で、大田区選挙管理委員会は不在者投票者数の二重計上(選挙区2590票、比例区2588票)により投票総数と開票数に差が生じたため、架空の「白票」を無効票として計上し区はこの事態を7月22日に掌握していたにも関わらず、ネット上で指摘されるまで隠ぺいしていました。この行為は、公職選挙法に違反する犯罪として刑事責任を問われかねないものです。なぜこのような事態が起きてしまったのか2度と起こさないために選挙管理委員会のみならず、区がどのように責任を果たすか区民に説明が求められています。区民への信頼回復のために本陳情の採択を求めます。
7第43号
「生活保護に関する最高裁判決の履行を厚生労働大臣に求める意見書提出」の陳情は、厚生労働大臣の減額決定を生活保護法違反と認定し、処分の取り消しを命じた6月27日の最高裁判決を守るよう、厚生労働大臣に対し区議会としての意見書を出すよう求めています。
生活保護基準は、年金、最低賃金、就学援助などにも影響するものです。
委員会では、国は「最高裁判決の対応のために社会保障審議会の下に専門委員会を設置」し3回の専門部会の会合が開かれている。国の判断を待つ必要がある。区は国の法定受託事務として、国の告示に基づき減額を行ったので、責務は国にある。として不採択としています。
しかし、生活保護基準引下げ違憲国家賠償等請求事件で、原告は大田区民1名、外31名。 被告は前大田区長 松原忠義 外、他自治体の区長18名で争われていた裁判の判決が、2022年6月24日、東京地方裁判所から出されました。判決内容は「国の告示に基づき、区福祉事務所が原告に対して行った生活保護法に基づく2013年7月22日付け、2014年3月12日付け及び2015年3月27日付けの生活保護変更(減額)決定処分は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を謳った憲法第25条、生活保護法第3条、及び第8条等に反した生活保護基準改定を前提としてなされた違憲・違法なものであるとして、決定処分を取り消し、損害賠償請求は棄却しました。この判決を不服として原告・被告がともに高裁に控訴しており、その後(のち)、今回の最高裁判決が出されたのです。
生活保護基準の大幅な引き下げを違法としたこれらの裁判では、大田区も国と並んで被告側であり、最高裁判決を重く受け止めるべきです。すでに(2013年)当時とその後の生活保護受給者の世帯数などを調べはじめている自治体もあります。原告を一刻も早く救済するためにも国の指示待ちにせず、本陳情の採択を求めます。
7第46号
大田区健康診査・特定健康診査・長寿健康診査項目に聴力検査を求める陳情は60歳以上で耳の聞こえづらさを自覚する方に、大田区健康診査・特定健康診査・長寿健康診査項目に聴力検査を入れることをもとめています。
委員会では、国の健康診断の項目に入っていないこと、健康診断受診表送付時に、聞こえのチェックリストが同封され、問題があれば受診に繋がること、聞こえづらさを自覚している方より、自覚されていない方の方が必要だ、などや、他区でも実施しているところが少ないことなどから不採択としています。
陳情者は千代田区の例を示していますが、さらに豊島区では、2022年度には地元医師会との連携強化を図り高齢者の聴力低下の早期発見に力を入れ、「加齢による難聴で意思疎通がしづらくなると、フレイルや認知症のリスクが高まる」ことから、区は無料の聴力検査を通じて、聴力低下がみられた高齢者には耳鼻科の受診や補聴器の使用などを促してきています。他には、港、中野、北区などでも聴力検査が行われています。大田区でも実施し高齢者の聞こえづらさからくるフレイルや認知症のリスクを軽減し、快適な社会生活が過ごせるようにするために本陳情の採択を求めます。
7第32号
特別養子縁組家庭に対する保育園入園児の利用調整基準指数の加点に関する陳情は、特別養子縁組により子どもを迎えた家庭に対して大田区立保育園等の入園選考において、利用調整基準指数の加点を付与することを求めるものです。
委員会では、特別養子縁組を行えば実子同様であり、加点は特別扱いになる、現在は待機児童ゼロで入園しやすい、公平公正の点から、などの意見で不採択となりました。
特別養子縁組は、実の親子として養子を迎え入れるもので、その目的は、子どもの福祉・利益保護を最優先し養父母との間に安定した親子関係を築く制度であり、家庭裁判所の決定を受けるなど時間もかかる制度ですから、より配慮も必要です。
理事者からは、区の規則で里親制度の家庭には来年度(2026年度)から加点をする見直しをするが、特別養子縁組は対象にならないとの見解も出されました。また、区は待機児童ゼロを主張していますが、実際には希望する保育園には入れず別の保育園に入る、あるいはやむなく育休を延長するという事例も出されています。陳情者は、大田区の認可保育園における直近4月の入園結果では、0歳児クラスの受け入れがあった128園のうち、44園においては、フルタイム勤務の共働き世帯の利用調整点数22点でも入園できなかった家庭が存在したと述べ、特に住宅密集地や駅に近い保育園では24点以上でなければ入園が難しい事例もあり、物理的に登園可能な範囲が限られている家庭にとっては入園のハードルが非常に高い状況ですから、特別養子縁組に対して加点を付与することで、特別養子縁組の制度を選びやすい環境づくりが進み、社会的養護が必要な子どもの支援の拡大にも寄与できると考えられると述べています。
希望する保育園に入園できるための保育園施設の拡充や、利用調整基準調整指数などは大田区の規則で決めることができるので、本陳情の採択を求めます。
7第45号
新空港線計画一期整備での「利便性」について具体的で丁寧な説明を求める陳情は、8月1日に羽田エアポートライン(株)と東急電鉄(株)がそれぞれ国土交通省に「新空港線整備に向けた速達性向上計画」の認定を申請しましたが、その根拠となる都市鉄道等利便増進法にある「利便性」について、特に第一期整備である東急蒲田駅から、京急蒲田駅付近に新設予定の仮称蒲田新駅間の、具体的で丁寧な説明を求めるというものです。
まず、陳情者は現在2~3分で乗り換えられる東急多摩川線蒲田駅とJR蒲田駅の乗り換え時間が大きく増えることを懸念していますが、委員会での理事者見解では、東急多摩川線蒲田駅からJR蒲田駅の乗り換えには5分20秒かかるとの予測だということでした。さらに、蒲田新駅から京急蒲田駅までの乗り換えには6分20秒かかるという理事者見解も出され、これでは、都市鉄道等利便増進法の「都市鉄道等の利用者の利便を増進し、もって活力ある都市活動及びゆとりある都市生活の実現に寄与する」とは言えないのではないかという懸念を払しょくすることはできません。
次に、新たに8両編成の直通運転の車両が入ると、多摩川線の駅の中に通過駅ができて沿線の住民には不便になるのではないかという問題については、理事者から、下丸子駅と多摩川駅は8両編成の車両が止まれるようホームを改修する、そこで乗り換えられる、どの駅に止まるかはまだ確定していない、今後適切な時期に区民に説明するとの回答がありました。
また、速達性向上計画の中に「渋谷、新宿、池袋また東京都内北西部、埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上に寄与する」と記されていますが、整備効果の例として挙げられているのは、渋谷などからではなく中目黒駅からの時間が約13分短縮されるという例示しかありません。本当にこれで渋谷、新宿、池袋駅から羽田空港へのアクセス利便性の向上になると区民の皆さんに伝わるのでしょうか。
委員会では、「蒲田新駅からいったん地上に上がり徒歩で駅まで移動することになる」という陳情書の表現に対し、今後検討することで、まだ決まっていない」「区報やポスターは羽田まで直通と報じ、と陳情者は述べているが、そんな事実はない。」などを意見として、不採択としましたが、区民が誤解する分かりにくい説明こそが問題なのではないでしょうか。
今日の大田区ホームページ、新空港線の概要には「新空港線は、東急多摩川線矢口渡駅の近くから多摩川線を地下化し、JR・東急蒲田駅の地下、京急蒲田駅の地下を通って、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる構想です。」と載っています。
以上のことから、現在申請されている「速達性向上計画」の「利便性」について区民に具体的で丁寧な説明をすることを求める本陳情の採択を求めます。
7第47号
軟弱地盤の新空港線計画工事への影響及び対策を液状化対策も含めて明示してほしい陳情は、新空港線計画予定地一帯は軟弱地盤であることからその調査、対策工事に多大なコストがかかる可能性があるので、事業許可取得前の現時点で迅速に検討を始め、区民にその情報を知らせることを求めるものです。
大田区ハザードマップによると、蓮沼駅から京急蒲田駅、さらに羽田空港まではほとんどの地帯が液状化の危険度が最も高い地帯となっています。昨年3月の交通政策調査特別委員会で大田区は、液状化などの対策については、鉄道事業許可取得後にHALが地質調査などを行いながら、必要に応じた対策工法を検討し、適切な事業計画を作成していくことになると述べ、今回の委員会では、理事者から新空港線工事費用の中に、液状化対策の調査、対策工事費用も含まれていると述べられましたが、具体的な内容はありませんでした。昨年1月の能登半島地震や埼玉県の道路陥没事故からも、その復旧工事の困難さがわかります。陳情者の言うように、首都直下型地震、南海トラフ大地震などがいつ起きてもおかしくない大田区で、地盤沈下のリスク、止水(しすい)、湧水(ゆうすい)対策など大変な困難が予想され、調査費用はもとより対策工事の費用はさらに膨らんでいくと考えられます。
以上のことから、陳情者が言うように、事業許可取得の前の現時点で調査、対策を検討し、その情報を区民に広く伝えてほしいという本陳情の採択を求めます。
以上で討論を終わります。