10月11日の本会議で反対の討論をおこないました。「なんでも反対」ではなく、理由を述べて区政の転換を求めています。ぜひお読みください。討論は菅谷郁恵議員が行いました。
第83号2023年(令和5年)度大田区一般会計歳入歳出決算、第84号議案 2023年(令和5年)度大田区国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算、第85号議案 2023年(令和5年)度大田区後期高齢者医療特別会計歳入歳出決算及び第86号議案 2023年(令和5年)度大田区介護保険特別会計歳入歳出決算の認定に反対の討論を行います。
討論に際しまして、国政問題は、区民の暮らしや命に直接かかわる大事な問題ですので一言申し上げます。
第3回定例議会中の臨時国会において、石破新首相が選出されました。能登半島の復興がままならない中、予算委員会も開催せず解散が強行され、15日公示、27日投票の総選挙が行われます。金権腐敗の裏金問題、統一協会との癒着などにメスを入れ、財界・大企業いいなりの政治から国民が主人公の政治をとりもどすため、奮闘する決意です。
まず、第83号議案2023年(令和5年)度 大田区一般会計歳入歳出決算についてです。
一般会計歳入総額は3162億4739万円、歳出総額は3129億4275万円、歳入歳出差し引き額は33億464万円となり、歳入歳出差し引き額から繰越金を引いた実質収支は、27億1125万円です。不用額は約127億9460万円余です。
今決算は、前区長が「地域課題に立ち向かい、ひととまちに寄り添い、豊かさと成長が両立する持続可能な未来への歩みを着実に進める予算」と位置づけ編成した最後の予算でした。高校3年生までの医療費無料化、特定不妊治療費助成、(仮称)大田区子ども家庭支援センター建設工事、不登校特例校分教室における転入学支援スペースなど評価できるものです。
その後、区長選が行われ、鈴木区長のもと6次にわたる補正予算がくまれました。特に学校給食費無償化予算が第1次補正予算で組まれ、党区議団は、2014年以来6回にわたる条例を提案するなど繰り返し求めてきましたし、区民に大変喜ばれている事業であり、このことは評価します。
しかし、認定に反対する第1の理由は、区民が切実に願う物価高騰から区民の暮らし、営業を守る対策が不十分だったことです。
区民の状況は、新型コロナウイルスの影響やロシアによるウクライナへの軍事侵略戦争、アベノミクスによる異次元の金融緩和がもたらした異常な円安により物価高騰が一層深刻になり、電気やガス料金をはじめあらゆる生活必需品が急騰し、生活・営業がより深刻になった年でもありました。
党区議団の「最終6次補正で公共施設整備資金積立基金20億円、防災対策基金20億円積み立て、財政基金に440万円、公共施設整備資金積立基金に12億円積み戻し、計52億円は物価高騰対策に十分活用できたのではないか」の質問に「物価高騰対策の2023年度事業費は134億円にのぼり、その時々に必要な対策を重層的に講じてきた」の答弁がありましたが、補正予算の多くが国からの事業であり、結果33億464万円(2022年度は40億3072万円)余の決算残高を生み出し、基金の決算年度末残高は1276億8564万円(2022年度は1300億760万円)になりました。
財政が厳しいとしながら、不用額は約127億9460万円で、区民と約束した予算が執行できず、借金を返し、新空港線整備基金など大型開発にためこんだ決算と言えるのではないでしょうか。
また、1月1日能登半島地震が発生し、区民の皆さんから「大田区は大丈夫なのか」など、防災対策に対する不安の声が寄せられましたが、具体的対策は耐震診断の期間延長でした。基金に積み立てる前に、燃えないまちづくりとして感震ブレーカーの全戸配布などできたのではないでしょうか。
大田区プレミアムデジタル商品券の発行4億5698万円余、経営基盤の強化支援の中小企業支援17億6654万円余がありますが、商品券は消費喚起であり、中小企業支援は設備投資などに対する融資であり、物価高騰で深刻な区内中小企業や、低所得者を含めた対策として不十分です。
さらに、新型コロナで1年間延期された「公共施設使用料」の値上げも受益者負担の名の下に行われたことは認められません。
物価高騰で暮らしと地域経済が疲弊している時だからこそ、地方自治体の役割である「住民の福祉増進」に全力を尽くすことです。
反対する第2の理由は、事務事業の見直しで区民施策の削減と負担増を進めたことです。
区は、「事務事業の見直しを行う目的は、単に財政負担を軽減するだけでなく、施策の新陳代謝を進め、限られた経営資源を区民が真に必要とする施策に振り向けて行くことであります」としています。また、「財源が不足する」として、すべての事業の見直しを求めています。
しかし、総括質疑で行ったように、決算年度も三井不動産インダストリアルパーク羽田内の大田区産業施設テクノスクエア羽田の入室において4ユニット中2つのユニットが空いたままであり、区は収入として8,135万円余が入ってこず、1億8000万円余の使用料を三井不動産に支払うということが起きています。2ユニットから区内の中小企業への発注は5年間でわずか10数件ということですから、本来期待した区内産業への仕事回しがほとんど行われず、結果、産業支援施設とは認めがたく、税金の無駄使いを継続しているといわざるをえません。こういった施策を事務事業見直しの対象にせず、聖域にしています。
私立認可保育園への法外援護の処遇改善費4600円の削減をし、さらに、2024年度予算で保育士応援手当を削減したことは区民の子育て環境を後退させたことになり、認められません。
区の姿勢が「全体の奉仕者」からいかに区民にとって大切な施策を削減するかに振り向けられていることを見直すことを求めます。
反対の第3の理由は、新空港線「蒲蒲線」についてです。予算では、新空港線の整備促進事業に5億7千万円余の予算を設定し、執行率3,51%、5億5千万円余の不用額を出した予算編成は、見通しがなく、計画そのものが問題です。5億5千万円あれば他の施策に使ったほうがより効果的であったのではないでしょうか。
新空港線計画をPRする動画には「本動画は、大田区独自の案であり関係者合意が取れたものではありません」と注釈までつけていること、区長が議長などと一緒に、国土交通大臣を訪問し「新空港線整備と蒲田のまちづくりに関する要望書」を提出したことも、計画が進んでいないことの証ではないでしょうか。
また、大田区は、経済波及効果が大きいとして、新空港線計画を進めようとしていますが、党区議団の質疑でも明らかになったように「経済波及効果」の資料を開示するように求めても「出せない」の一点張り。開示請求の資料は黒塗り、これでは経済波及効果の根拠が見えません。これで、区民への説明責任を果たしているといえるでしょうか。新空港線及び鉄道まちづくりをどれだけの財政投入になるか明らかにせず大規模開発を強引に進め、公民連携による大企業の利益優先になっていることです。
このような状況で、さらに、沿線のまちづくり整備と一体で進めようとしています。区民不在の沿線まちづくり構想は、莫大な税金投入が予想されます。
新空港線整備及びまちづくり資金積立基金には10億円余を積立、98億4771万円余となっています。改めて、こんなにも区民に説明責任を果たさず、大きな区民犠牲を伴う新空港線整備計画の鉄道沿線まちづくり構想の白紙撤回を求めます。
反対の第4の理由は、デジタル化を一層進め公民連携と正規職員削減を進めていることです。区は、一層の民営化と会計年度任用職員の活用により職員の削減で、職員の専門性と技術の継承を難しくしています。
区自ら会計年度職員の活用、委託や指定管理職員の身分が不安定で最低賃金すれすれの官製ワーキングプアを大量に生み出しています。2023年度予算では短時間勤務の会計年度職員は前年度と同じ1938人(1876人)で、全職員の約3割になっています。事業計画等も民間委託で事業者に丸投げになっており、民間委託や職員削減で職員の専門性と技術の継承が危うくなってきたのではないでしょうか。また、今議会でも指摘されたように募集しても職員不足、採用されても途中退職などが起きているのは「福祉増進」に立つ仕事よりも、いかに効率化に努めるかなど働く意欲が削がれているからではないでしょうか。職員の技術の継承や高度な課題への対応するために正規職員の増員育成が求められます。保育園や学童保育の民間委託見直しを求めます。
デジタル化の一層の推進で、情報の漏えいの発生や、窓口業務等行政サービスのオンライン化による職員削減の見直しを求めます。
さらに、2022年1月改定の公民連携基本指針では、行政と民間企業等が協働で公共サービスの提供を行うなどとしています。しかし先に述べたようなテクノスクエア羽田、羽田イノベーションシティ、パークPFIの手法を用いるための羽田空港跡地第1ゾーンでの都市計画公園など区民の土地を使って民間大企業を儲けさせることが起きています。これは、自治体の責任放棄と民間大企業に儲けを提供させることになり、見直す事を求めます。
次に、決算特別委員会で党区議団が要望したことについて新年度予算に反映することを求めます。
・物価高騰対策として、区独自対策を行うこと・財政基金について活用すること・医療ケアの必要な重症心身障害者のグループホームの建設計画をたて、区の責任を明確にすること。・三井不動産インダストリアルパーク内の大田区産業支援施設に入居された事業者に大田区内製造事業者へ発注相談等を増やすよう要請すること。・大企業だけでなく小規模事業所への支援として、空工場を区が借り上げて貸し出すこと・区内の中小零細企業への支援のため家賃など固定費補助を行うこと・今後の区内公園の管理運営に様々な問題のあるPark-PFIは導入はしないこと・大田区が発表した新空港線事業に関わる経済波及効果の元になった資料・データを区民に公開し事業の内容の透明化を図ること・新空港線整備計画とともに進める沿線まちづくりの見直しをすること。・新空港線の早期実現への反対や見直しを求める意見よく聞くこと。・高齢者の熱中症対策の課題としてエアコンがない、故障している、購入できない区民への対応を急ぐこと。・物価高騰で毎日の食費も苦労している生活保護世帯へのエアコンの購入補助を行うこと。・88歳長寿祝金制度の3000円の商品券贈呈を復活すること・公共の土地などを活用して特養ホームの建設を進める事、体調が急変する末期ガン患者の要介護認定を早急に行う体制をとるよう改善すること、介護事業所の廃業が相次いでいるため、大田区が特別の支援を行うことなどの施策の実施を求めます。
次に第84号議案2023年度(令和5年度)国民健康保険事業特別会計決算の認定に反対の討論を行います。
反対の第1の理由は高すぎる保険料と均等割りです。
大田区では、2023年3月31日現在、保険料を納期までに払えない滞納世帯数は23159世帯、26,86%、差し押さえ件数は前年同月比176件増の390件、執行停止件数は前年同月比536件増の4130件であり、この数字からも保険料が高くて払えない実態が表れています。払えない人に差し押さえや執行停止をすることが区民に寄りそっているといえるでしょうか。問題は保険料が高すぎる事です。
年間の一人当たりの保険料13万Ⅰ813円が、2023年度は14万3363円とたいへんな値上げになり、自営業や年金生活者など比較的に財政基盤が弱い区民が多く加入しており、負担増となっています。
保険料は、加入する世帯の所得と加入者数によって決まります。つまり、扶養家族など家族・世帯人員が多い家庭ではその分保険料も高くなる人頭税のような均等割 制度があります。その均等割り金額も、前年度から4800円値上げし、60100円になり、ついに6万円台なりました。たいへんな負担増です。
ようやく未就学児の均等割りは1/2が減額されることになりましたがさらに、4600万円あれば全額助成することができます。子育て応援の大田区としての対応を早急に求めます。
反対の第2の理由は延滞金の徴収強化です。
国保の延滞金は、2017年度まで0円でした。実質徴収してこなかった延滞金を2018年から徴収をはじめ、今決算では3968万円です。滞納者を追い込む徴収の強化はやめ大田区独自で保険料の減免、換価の猶予、徴収の猶予を活用し区民に寄り添った対応をすることを強く求めます。
国民健康保険事業が社会保障として、被保険者の命・健康・暮らしを支えることができるよう大田区としての責任を求めます。
次に第85号議案2023年度(令和5年度)後期高齢者医療特別会計決算の認定に反対します。
後期高齢者制度は75歳以上という枠を作り、その中で、まかなおうとすることに限界があります。2年ごとに保険料が値上げになり高齢者の生活を圧迫しています。
保険料の値下げこそ必要であり、広域連合が保険者ですが、区として75歳以上の区民の命・健康暮らしを支えるためにも、制度の廃止を求めます。
次に第86号議案2023年度(令和5年度)介護保険特別会計決算の認定に反対します。
この年度は第8期の最終年度でした。大田区は第8期において介護保険料基準額を6000円に据え置きました。
第8期大田区介護保険事業計画では、計画期間内の3年間で介護給付費準備基金から約26億円の取り崩しを見込み2023年度は14億円の取り崩しが7億3000万円となり、決算年度残高54億7808万円です。
2024年度第9期で、保険料を引き上げる必要はなかったのではないでしょうか。
特養ホームの待機者は約1000人で、依然として足りません。区民は、特養ホームの建設を待っているのに「仮称 大森みずほ」の建設は、入札不調が続いています。区の支援を強化して一日も早く建設することを求めます。
以上で反対討論を終わります。