第4回定例議会に区民の皆さんから多くの陳情が提出されました。各委員会で審議がなされました。議会最終日の12月5日の本会議にて日本共産党区議団として、採択と不採択を求める討論を菅谷区議が行いました。以下
やや長くなりますが、ぜひお読みください。陳情、請願は誰でも提出できます。区政への意見として、今後もぜひ提出してください。
日本共産党大田区議団を代表して(総財)7第62号、(地域産業)7第49号、7第58号、(議会運営委員会)7第50号、7第59号、(交通)7第57号、7第61号、の陳情を不採択とする委員長報告に反対し採択を求め、(総財)7第64号を不採択とする委員長報告に賛成し不採択とする討論を行います。
まず、
〇7第62号 大田区区民意見公募手続きの重要性を再確認し職員への徹底を求める陳情についてです。
区は区民意見公募手続き(パブリックコメント)は要綱に応じて行っており、計画等の策定の際は区民からの意見を求め、反映に努めていると説明がありました。そしてより多くの意見が寄せられるよう努力しているとのことです。しかし陳情者はよせられた意見がその後の計画に反映されているのか疑問が広がっていると述べています。さらに地域交通計画へのパブリックコメントで素案に疑義ありという意見が9割だったのに結果報告では今まで通りの説明を繰り返すだけで、素案を進める前提での意見募集なのか、さらに交通政策調査特別委員会で、反対意見は区民の数からいったら微々たるものだ」「反対の人が熱心に寄せる賛成の人はわざわざ意見を寄せない」といった委員に対して委員長も行政職員も否定しなかったことで、パブリックコメントは何のためにあるのかと不信を抱いています。不採択とした意見に「意見をすべて反映できるわけではない」「政策を変えるわけにはならない」などがありましたが、陳情者は区民からの意見を広く寄せていただき、開かれた区政の実現に立ち戻るよう、職員だけでなく区議会も大田区区民意見公募手続きの重要性の再確認を求めています。採択をすべきです。
次に
〇7第49号 地方消費者行政の維持・強化を求める意見書を国会等に提出することを求める陳情は、東京弁護士会など3弁護士会から提出された陳情です。
大田区議会として、国会、内閣、財務省および消費者庁に対し、国民生活の安心安全を担う地方消費者行政が安定的に遂行されるよう施策の意見書提出を求める内容です。施策の内容は、地方消費者行政強化交付金の交付期限の延長や交付金同様の財政支援の措置をし、消費生活相談員の人件費への支援を求めること、パイオネット刷新や消費生活相談のデジタル化で地方公共団体に生じる費用を国の措置として求めることなどです。所管・地域産業委員会では、消費者庁の来年度予算の概算要求に「地方消費者行政強化交付金」の延長予算が盛り込まれたのでほぼ願意が充たされているなどとして不採択にしました。
陳情者も述べられ、また委員会での理事者答弁にもあったように、近年、消費者生活相談件数、被害・トラブル額は増加し、高齢者の被害件数や相談数は大田区においては全体の相談数の4割を占めています。インターネット通販やSNSをきっかけとする被害が激増するなど相談自体が多様化・高度化している中で、安定的な消費者相談体制の維持・強化は必要であり本陳情の採択を求めます。
次に、
〇7第58号 健康を維持するため区立平和島プールの利用料金を値上げしないことを求める陳情は、来年2026年4月から改定され値上げされる、平和島公園水泳場のプール使用料の値上げをしないこと求めているものです。
所管・地域産業委員会では、「陳情者の訴えていることや心情は理解する」としながらも「資材費など物価高で指定管理者の経営も大変」「大田区全体で受益者負担の適正化を行っている」などとして不採択としました。
大田区では受益者負担の適正化の観点から定めた算定方法によって、原則4年ごとに施設使用料の見直しを行い、見直しのたびに大体の施設・区分が値上げになる改定を行ってきました。それにより、今回、平和島公園水泳場のプール使用料は夏季の大人料金が360円→450円の90円増、温水季の大人料金480円→600円の120円増などの値上げになります。区は高齢者の利用の場合は2回利用した場合に1回分は無料になる制度を設けているなど高齢者支援もしているとのことですが、しかし、陳情者が言うように今の異常な物価高騰の中で体力維持や健康のために少ない年金から食費を削りながらプールを利用する、爪に火を点すように苦しい生活をする区民の生活実態に応える支援にはなっていません。高齢の区民が気軽に区立プールを利用し、健康を維持し、友達をつくり、豊かな老後を送ることは施設を利用する区民の幸せに繋がるばかりでなく、結果、医療費や介護費用の区の負担も抑制することになります。陳情を採択し今の異常な物価高騰から区民の生活と健康を守る施策を推進することを求めます。
次に
〇7第50号 政務活動費に関して自由民主党会派の雇用保険法違反の懸念と議会の対応を求める陳情は、政務活動費の使用に関し、雇用保険法に違反する恐れのある支出が確認されたとして、大田区議会として問題の真相を明らかにするとともに同様の問題が今後発生しないよう適切な対応策を講じることを求めています。
私たち日本共産党区議団は、会派として事務局員を雇用していますが、所得税を源泉徴収をしていることはもとより、社会保険と労働保険にも加入し、保険料を支払っています。
所管の議会運営委員会では、「個別の案件であり、会派で対応するもので、議会全体で対応するものでない」「そもそも陳情を採択しても協議する場がない」などとして不採択にしました。
雇用保険法第6条(適用除外)では、「次に掲げる者については、この法律は、適用しない。」とし、第1項 一週間の所定労働時間が二十時間未満である者、第2項 同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者などとしています。すなわち
1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがあれば、労働者の方は、原則として全て被保険者となります。パートやアルバイトなど雇用形態や、事業主や労働者からの加入希望の有無にかかわらず、要件に該当すれば加入する必要が定められています。
陳情者は情報開示請求をし確認した資料、この陳情に添えられた資料から一週間の所定労働時間が20時間以上ある労働者の雇用が確認できることから、雇用保険法違反の恐れを指摘しています。
しかし、委員会の議論では、前回の人件費・所得税法に関わる陳情同様に、自民党会派からは、会派(雇用主)と労働者の契約内容や雇用保険の加入の有無、労働者の雇用形態など人件費の詳細は示されませんでした。その実態は結局、わからないままです。ましてや、人件費の出所も税金である政務活動費です。今回は自民党会派の人件費支出の問題として提起された問題ですが、大田区議会として陳情の趣旨を重く受け止め、全会派の当事案にかかわる問題の実情や実態を明らかにし、今後、人件費に関わるルール作りを進める必要があり、陳情の採択を求めます。
次に
〇7第59号 区議会議員の区民に向けての不適切な発言を撤回することを求める陳情です。
陳情者は10月21日の交通政策調査特別委員会で、地域公共交通計画(素案)に関するパブリックコメントの結果報告に関する議論のなかでパブリックコメントに意見を寄せた区民を出席議員が「文句をいう人」という言葉を用いて区民を表したことは不適切で信頼性を損なうものであり、発言の撤回を求めています。
所管・議会運営委員会では、「当時の委員会中に発言が問題にならなかった」「発言の前後を聞いてみると問題発言ではない」との意見で不採択としました。
議員必携によると、「議会は、言論の府 といわれるように、議員活動の基本は言論であって、問題は、すべて言論によって決定されるのが建前である。このため、議会においては、特に言論を尊重し、その自由を保障している」としています。続いて、「しかし発言が自由であるからといって、どんな内容の発言も許されるというものではない。おのずから節度のある発言でなければならない。たとえば、議場の秩序を乱したり、品位を落とすものであったり、個人のプライバシーに関する発言まで許されるものではない」としています。また、「…発言者は、自己の発言に責任を持つことが要求される。議会での議員の発言は、いかなる思想、信条に立つものであろうと自由であることは前に述べたとおりであるが、発言の内容によっては自己の政治的、道義的責任を問われることもある…」としています。
今陳情での発言は、議員必携に照らしても、節度ある発言とは言えない発言であり、議会の品位を落とす発言に繋がることから、発言者へ発言の撤回を求める陳情の採択を求めます。
次に
〇7第57号 「パブコメ結果に基づき新空港線(蒲蒲線)第一期整備計画」を求める陳情は、「地域公共交通計画(新空港線第一期整備区間沿線地域)(素案)」に対するパブリックコメントに寄せられた多数の反対・中止・見直し疑義の意見に基づき新空港線(蒲蒲線)計画の中止を求めるものです。
8月21日から9月11日に行われた「(新空港線第一期整備区間沿線地域)の地域公共交通計画(素案)」に対するパブリックコメントには、76名の方から延べ251件の意見が寄せられ、その内容は、新空港線計画の採算性、利便性、2期工事までの計画の不透明性や物価高騰の中のさらなる区民負担の懸念など具体的な疑問や不安の声が全体のコメントの9割を占めました。
委員会では、パブコメに出された意見はしっかり受け止めている、今後もホームページや区報などで疑問に答えていきたいなどの理事者からの見解があり、委員からもパブコメは事業の是非を問うものではないとして不採択としましたが、そもそもこの地域公共交通は新空港線整備を前提とした計画であり、区民の方々が新空港線に計画に対する様々な意見をあげることは当然です。
また、陳情者が述べられているように、パブリックコメントで出された意見は、十分考慮しなければならないにもかかわらず、「検討する」「調整する」などという回答で終わらせては、考慮したとは言えないのではないでしょうか。区民の声を真摯に受け止めることを求め、本陳情の採択を求めます。
次に
〇7第61号 新空港線計画に係る【費用対効果B/C=1.5】の算出根拠の開示を求める陳情は、費用便益比が公共事業の妥当性を示す重要な指標であることから、新空港線計画の賛成・反対に関わらずその根拠を区民に明らかにすることを求めています。10月3日に新空港線整備事業が羽田エアポートラインと東急電鉄が協議し作成した「速達性向上計画」が大臣認定されましたが、そこには、新空港線計画の費用便益比は1.5と記されています。2022年の都区合意の時点での2.0から1.5に下がりました。国土交通省鉄道局の「…鉄道関係公共工事の事業評価結果及び概要について」では、累積資金収支が黒字に転換するのは17年から40年と大幅に延長されることになります。しかし、理事者からは、区は費用便益比は羽田エアポートラインと東急電鉄が協議して作成し、国に提出したものだから区が公表する立場にない、国が公表するなら大田区も公表する、区から国に開示を求めることはできるが、するつもりはないと説明されました。新空港線計画は区民の税金を使って行う事業です。羽田エアポートラインは副区長が代表となる第三セクターです。これでは区民への説明責任がなされたとは言えません。陳情者が求めるように費用便益比の算出根拠を検証可能な形で大田区として責任をもって区民に開示することを求め、本陳情の採択を求めます。
最後に
〇7第64号選挙公費負担における関連会社・親族企業等への発注制限を求める陳情を不採択とした委員長報告に賛成の討論を行います。
陳情は、選挙における公費負担は国民の税金であるので「候補者や政党の関連会社、親族企業へ発注が集中すると公金の私物化利益還流の疑念を生む可能性があるため発注の制限をすべき」というものです。陳情者が言うように選挙の公費負担は税金で行われています。秘書や親族へ公金が還流することは決して許されません。しかし、陳情者は日本共産党の候補者のポスターの価格が他党より高い、印刷会社が党の機関紙を発行しているので、公金が関連企業に還流している可能性は否定できないと述べていますが、要綱の上限額を守っている事はもちろんまた、印刷会社は親族でも関連企業でもない党から全く独立した企業で事実とは全く異なることを指摘しておきます。陳情者は「想像される」「可能性がある」から「公金の還流が疑われる」という、いわゆる思い込みで、制限をかけるべきとしています。政治資金収支報告書等から明らかになった維新の会の共同代表や総務会長を務める国会議員が、秘書が代表の会社への政党交付金等の公金を家賃や印刷費としていた事例とは全く異なります。根拠のない事実と違う陳情は日本共産党への誹謗中傷となります。また、このような陳情は日本共産党だけでなくすべての政党・候補者の選挙の自由を侵すものであり、不採択に賛成します。以上で討論を終わります。